幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
廊下で出会った森下は、
「三波ちゃんから休むって連絡ありましたよ。三波ちゃん、やっぱり熱出たんだ」
と健一郎に言う。
『やっぱり』という言葉に健一郎が首をかしげると、
「昨日、真壁先生が言ったんですよ。三波ちゃん見て、熱出るときの目をしてるって」
と、森下が言った。
健一郎は、思わず自分の拳を握っていた。
(ああいう天然が一番怖い……)
自分は戦略を練って、囲って……そうして、無理矢理でも三波を手に入れた。そのことに対しては、多少の後ろめたさのようなものがある。
対して、真壁はというと、昔からまっすぐだ。
何の戦略もなく相手に向かっていく。
そういうところが自分にとっては脅威でもあった。だから、自分が焦ったような行動をとる時は、大抵が真壁に関することだった。
「……真壁。やっぱり油断できないな」
「へ?」
「明日から、出張、行きたくないなぁ……」
「何言ってるんですか」
軽快な笑い声で、森下は健一郎の背中を叩いた。本当に心配しているのだが……。
三波の近くに森下がいてくれることだけは安心だと思いなおした。