幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

『本日の写真256枚』

(わぁ……! また鳥肌たった!)

 本日の写真とはすべて私が寝ているだけの写真でなにも変化のない写真だ。ちなみに、すべての写真にお気に入りのハートマークが押されている。

「最低! 何が数枚よ! 寝てるだけの写真を200枚以上って……! こわいって!」

 私が完全に怖がっているというのに、健一郎は、当たり前の顔をして、

「普通ですよ。奥さんをこよなく愛しているだけです。愛しすぎているんです。三波さんなら目に入れてもいたくありません」
とのたまうのだった。

「いや、目に入れたら痛いでしょ!」

 つっこみどころはそこではない。しかしもうどこからつっこんでいいのやらわからない。
 健一郎は、入籍してからと言うもの、以前以上にストーカー気質が加速している。

 私は結婚前は健一郎のストーカーぶりを知っていると思っていた。変態気質だって多少は。
 そしてあの時、一緒に住んでいなかったからこそ、あれがマックスで、あれが最高値だと思っていた。

(でも、今はどうだ……)

 間違いなく昔よりひどい。それをまた健一郎は当たり前のように言うから余計にいたたまれない気持ちになるのだ。

「とても愛していることを、今から証明して見せましょうか」
「しようとするな! あぁ……もう!消えたい。いや、むしろ消したい」
「写真を……? それは、だめですよ!」
「健一郎をよ!」
「三波さんになら何をされてもいいですよ」

 健一郎はふふふ、と笑う。完全にこの笑顔が有害なのだ。どんな罵声を浴びせようとも、どんなことをしようとも、心から嬉しくて笑っている。

(ストーカーで変態め!)

 しかしこんなことでめげてはいられない。
 私は負けじと、

「じゃあ、今夜から椅子に縛り付けるからそれで朝まで過ごしてよ」
と微笑んだ。それなら安心だ。
 縛り付ける分には、健一郎も動けないはず。私にとっても非常に安心・安全な策と言えよう。

 そう言った私を見て、健一郎が意外そうな顔をした後に、また微笑む。

(何笑ってんのよ……?)

 私が健一郎を睨みつけると、健一郎は言った。
「もちろんいいですよ。三波さんはそういうプレイがお好みでしたか」

―――ホント、なぐりたい…。

 そう思ったものの、DVになってはいけないと拳をそっと収めた。とにかく有言実行だ。

 この日の夜、健一郎を椅子に縛り付けて私はぐっすり眠った。健一郎は嬉しくて寝不足になったそうけど、自業自得だ。

(一体この人は、どこまで変態なのだろう……)

 そんなことをふと思うが、それを解き明かしても私にはなんの得にもならない。むしろ気持ち悪さが増すだけだ。そう思いなおした。とりあえず明日も椅子に縛り付けて眠ることにしよう。そうすれば私には危害は加わることは無い。

 しかし、次の日の朝、あろうことか私の仕事場の研究室にまで来て、
「三波さんが寝かせてくれなくてー」
と健一郎が喜ぶので、私は椅子に縛り付けるのを辞めざるをえなくなったのだ。

 このふざけた結婚生活を一生続ける自信がない。
 むしろ一週間もてばいいほうなのでは……とも思えてきたのだった。
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