幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
「私、高校の時は、真壁くんのことが好きだった」
高校時代、私は真壁くんのことが好きだった。かなわない恋だとわかっていても、ずっとずっと好きだった。
突然、真壁くんから夢みたいな告白を聞いて。
でも、私は先ばかり見てしまって……断った。私にとって、好きな人と結婚できるなんてありえない話だったから。きっと付き合っても別れる日が来る。それならいっそ最初から付き合わないほうがいい。高校時代の私はそう考えたのだ。
「でも、付き合う勇気が出なかった」
別れるのが怖くて……。今ならわかる。真壁くんは医者になろうとして私との将来を真剣に考えてくれていたし、二人で佐伯医院を継ぐ将来もあったかもしれない。でも私はその将来が信じられなかった。
「でも、今は、ちゃんと健一郎のことが好き。当たり前でしょう。結婚してるの。私達」
「もしあのとき、俺と付き合ってたらどうなってた」
真壁くんの眼の下が赤い。
私は息をうまく吸えなくなる。なんで今、こんなこと知って、こんな話をしているのだろう。私たちは……。
私は唇をかむと、まっすぐに真壁くんを見る。
「そんな、もしもの話なんて分かるわけないでしょ。真壁くんのこと好きだったのは昔の話なの。真壁くんだって、きっと昔のことが懐かしくてそんな思いを思い出しただけだよ」
「それでも俺は…!」
「早く離して。痛いから」
低い声でそう告げる。ふっと真壁くんの腕が緩んだ。逃れようと身をよじった時、
「だめだよそういうこと。病院内でしてちゃ。ま、俺も人のこと言えないんだけど」
と声が聞こえて、思わずそちらを振り向く。
部屋に入ってきたのは健一郎の次に見られたくない人。
(っていうか、いつからいたの!?)
「藤森先生!」
そこには、藤森先生が立っていた。