幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

(何でここにいるの! 藤森先生は神出鬼没だ)

「真壁先生。花田先生が探してたよ」
「……はい」

 真壁くんが慌てて離れて、部屋を出る。すると、藤森先生がじっと私を見ていることに気づいた。

(気まずい…。私は何も悪くないはずだが。藤森先生にみられて誤解されることは避けたい)

「ち、ちがいますから!」
「まだ何も言ってないよ?」
「くっ!」

 負けた気がするのは私だけだろうか。
 唇を噛む私を見て、藤森先生は、はは、と笑う。そして、

「健一郎のいないときに、二人でいい雰囲気ってちょっとひどいよね?」
「だから、誤解ですって!」
「しかも、俺には壁ドンで、真壁はいいんだ」

 どうやら、あの壁ドンの件をまだ根に持っているらしい。あれは自分が悪いんでしょうが。と思うけど、今の状況では強くも言えない。

 私はじっと藤森先生をにらんだ。

「俺と真壁と健一郎、なにがちがうの?」

 意地の悪い言葉に思わず壁ドンをしようとすると、その手を藤森先生がつかんだ。

「前は油断したけど、今日は油断しないよ。いくら三波ちゃんが強くったって、大人の男の力にはかなわない。さっき、真壁が抱きしめた時に逃げられなかったようにね」

 そう言われて、唇をかむ。
 悔しい。私は健一郎に心配してもらわなくても、自分で自分のことはなんとかしたい。でも藤森先生につかまれた腕は動かなくて、私はただ藤森先生を睨むしかできなかった。

 その時、天の助けとばかりに、藤森先生の院内携帯が鳴った。
< 172 / 227 >

この作品をシェア

pagetop