幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
「僕は三波さんが一緒にいてくれるだけで、最高に幸せです」
そう、健一郎が耳元でささやいた。
私は思わず笑う。健一郎はいつだって私に一番欲しい言葉をくれるのだ。
そう思っていると、
「大丈夫でしたか。留守中」と健一郎が私に聞く。
「何が?」
「ほら、真壁とか」
「な、な、なんで真壁くんの話なんて」
思わずどもった。でも、私は後ろ暗いことはしてない。なのに……。
健一郎は少し不審そうに眉を寄せると、
「なにもないならいいんですが」
とつぶやく。「最近忙しくなってきたから……三波さんを見張ることもできないし」と小さな声で言う。
しかし、声が小さくて、私の耳までは届かなかった。
「聞こえなかった、何ていったの?」
「いや、別に何もないです」
また抱きしめた手に力が入る。暖かい。健一郎の体温に安心する。
「ねぇ、三波さん」
「なに?」
「僕は三波さんのこと、好きです。三波さんのそばにいます。これまでも、これからもずっと」
「何言ってんの……」
私は笑って誤魔化そうとしたけど、それはやめた。
その代わり、健一郎の眼をじっと見据えて、
「私も健一郎のことが好き。ちゃんと好きだから」と言った。
自分だけいつも健一郎からもらってばかりだ。私だって、健一郎に何かしたいと思う。
でも私に今できることは、気持ちを素直に伝えること。それしかない。
そういうと、健一郎は、何とも言えない目で、じっと私を見つめる。
(私、変なこと言った!?)