幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

(結局、健一郎のしたいようになってる……)

 次の日、私は大学のパソコンの前でフリーズしていた。
 なんとなく腑に落ちないが、それでもいいと思える自分がおかしい。

 そんなことを考えていると、本橋教授から一つのお願いをされた。
 病院のほうへ届け物をしてほしいとのことだったが、それが藤森先生宛て出なかったことにほっとする。

 やっぱり、なんだかあの先生は苦手だ。

 ただ、私のことが好きで手を出している……そんな風にも思えなかった。
 あの先生は先生で、なにか考えているような気がする。

 病院に入って資料を届けると、研究室棟に戻ろうと踵を返した。
 研究室棟に入ったところで、以前、夜に入ったお手洗いが目に入る。

 あの時は、看護師さんたちが噂していた。
 健一郎のこと。私のこと。健一郎は、もっと上に行けたとか、大学教授になれたとか、そんな話。そして真壁くんも言っていた。ホプキンスからお誘いが来ていると。

 健一郎がどう返事をしたのか知らないけど、最近、私はいつだって頭の片隅で考えているのだ。

―――私との結婚は『健一郎にとって』本当によかったことなのか。

 それほど、健一郎の周りからの評価は高いのだ。
 たぶん、地方病院の病院長という肩書の未来では許されないくらいに。

(私だって少しはわかってる)

< 176 / 227 >

この作品をシェア

pagetop