幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

「患者さんに心配されてるって、どうなんだろうねぇ」
と背後から笑い声がして、振り向くと佐伯幸三先生が立っていた。「久しぶりだね、健一郎くん。会えてうれしいよ。実習は順調?」

 僕はその返答に困り、なんとなく頷くと、じっと緒川さんの腕についている点滴を見た。

「あれは、ただの痛み止めですよね」
「あぁ、わかるかな。すい臓がんステージⅣだ」

 田中さんと一緒だ。思わずそう思った。
 年齢表示を見ると、それも同じで驚いた。

「ご親戚ですか?」
「いいや、ただの患者さん。親族はいない方なんだ」

 そこまで田中さんと一緒なのか。思わず小さくため息をつく。


 そして、
―――きっと緒川さんが亡くなれば、あの少女はまたわんわん泣くのだろう。
 そんなことが頭をよぎった。

 近所の住人と言うだけの自分の両親の葬式の日でさえ、わんわんと泣いていたくらいなのだから……。

(なんで、そんなところにわざわざ自分から飛び込んでいくのだろう……?)
 僕は思わずこぶしを握る。彼女の浅はかさがやけに気に障った。

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