幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

―――親切のつもりか、嫌みのつもりか。
 どういう気持ちだったのか今ではもうわからないけれど、とにかく僕は、そのあと病室から出てきた三波さんに、
「懇意にしていてもあとでつらくなるだけですよ」と助言をした。

 三波さんはその声にふっと振り返ると、不愉快そうに眉をよせて、「あなたには関係ない」と言い放つ。
 その言葉に、僕は思わずむっとした。

 昔の懐いてくれていたころの思い出もあったせいか、自分のいう事なら彼女は聞くかもしれない、そんな自負もあったのかもしれない。

 でも違った。
 彼女は、今の自分の行動が一番いいと思っている。僕はそれがあとで彼女を苦しめるかもしれない、そう思ってアドバイスしてあげただけなのに。かわいくない。

 思わず声を荒げて、
「それは三波さんの、ただの自己満足でしょう」と言った。それで緒川さんの病気が治るわけじゃない。相手は『病気』だ。『人』だと思うから苦しくなる。
 実際、僕の周りの研修医は、懇意にしていた患者が亡くなった時、立ち上がれないものもいた。その人間に三波さんを重ねたのだ。

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