幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
僕は何となく、そんな彼女から目をそらした。
「三波」
佐伯先生がなだめるように彼女の肩に触れる。
彼女もふと我に返り、僕の顔をもう一度じっと見た。
「大丈夫? 顔色が悪いけど……」
三波さんがそっと僕の頬に触れる。
その手の温かさに、感情が零れ落ちそうになって、僕は思わずその手を払いのけた。
「なによ」
「す、すみません」
どうしていいのかわからずにその場に立ち尽くす。そんな僕を見て、彼女は小さく息をはいた。そのしぐさにドキリとする。
「そんな泣きそうな顔しないでよ」
「泣きそうな顔なんてしてません」
「そう?」
彼女は少し考え「なら、誰かにいじめられたの? 私、強いから任せて。私が守ってあげるわ」
跳ねあがるように、思わず顔を上げた。幼い日の彼女の言葉を、彼女が口にしたのだ。
彼女のほうはというと、昔のことは覚えているわけでなくて、昔から誰に対しても変わらない感情を持っているだけのようだった。
(この子は、誰に対しても同じように考えているんだ……)
最初に出会った日からずっと変わらない彼女と、いまでも変われない僕。
その差がやけに醜く思えて、僕は目をそらす。
目の前の彼女は、だから大丈夫よ、と笑った。
中学生にかなわないなんて……。