幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

 三波さんは、緒川さんのお葬式の日、大きな声で泣いて、涙が枯れるんじゃないかって思うくらい泣いて……それでも、まだ、ずっと泣き続けた。

「三波さん。水分、とってください」
 そう言って、ミネラルウォーターをわたす。
 緒川さんのお葬式に来る途中、なんとなく用意していたものだった。

「ありがとう……健一郎」
 泣きながら三波さんが笑って、僕は心底ほっとした。
 そして、自分のことを覚えていたのかと、胸が急に高鳴った。


「ありがとう、健一郎くん。来てくれたんだね」
 喪服に身を包んだ佐伯先生もやってきて、僕に挨拶をすると、佐伯先生は三波さんの頭をなでた。

 そして、
「これ。緒川さんから三波に渡してくれって言われてたんだ」と、佐伯先生が一枚の手紙を三波さんに手渡す。

 三波さんはその手紙をすぐに開けた。
 そこには、緒川さんから三波さんにあてたメッセージが書かれていた。

 子どもがいない自分だけど、孫のように三波さんのことを思っていたこと。
 そして、三波さんといると、不思議と痛みが緩和されて、笑顔になったこと。最後に、ありがとう、と記されていた。

「あの日……緒川さんが亡くなった日、三波が病室来るまで待ってたな。その前日の夜から何度も危なかったのに」
 佐伯先生が言う。
「緒川さんが私のこと、待っててくれて嬉しかった」
 三波さんは、手紙を握りしめて、くしゃっとした笑顔で笑った。

 亡くなった緒川さんの救いになっていたのは、医者でも薬でもない。間違いなく、この目の前の少女だ。

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