幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
2章:この生活が始まった理由
―――結婚は好きな人とする。
それは私にとっては常識ではない。
私は小さな頃から何度も何度も言い聞かされて育ってきた。
『25歳になったら佐伯医院の跡取りになるお医者様と結婚すること』
先祖代々続く「佐伯医院」を経営する我が家には、不運にも私しか子どもがおらず、さらに私はうちの病院を継げるほど賢くはなかった。つまり、医者にはなれなかったということだ。
医学部と言うところはお金を積めば誰もが入れるというわけではないらしい。テレビドラマではよくみるのに、現実は厳しい。
その引け目もあり、25歳になったら…と言い聞かされて育ったこともあって、
私は25歳の誕生日には、相手は誰だかわからないが、どこかのお医者様と結婚することが決まっていた。
私は下手に運命に逆らう気はなかった。
結婚のことを除けば、愛情いっぱいに育ててくれた両親には感謝しているし、おじいちゃんやおばあちゃんも大好きだった。病院にいるお医者さまや、看護師さん、地域の患者さんも私は好きだった。そんな人たちが過ごす病院を守るということは、私にとって嫌なことではなかったのだ。むしろ、自分の中で楽しみな将来だ。
でも、問題は相手だった。
これまでお見合いも何回かしてみたけど、どの相手もピンとこなかった。結婚したら、そのうちピンとくるものなのだろうか。今は、名も知らぬ顔も知らぬ相手のこと、一年後には好きになっているのだろうか。
きっとそんなものだろうと思いながらも、私は期限ぎりぎりまで結論を延ばしてしまっていたのだ。