幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
「三波さん……三波さん?」
遠くから声が聞こえる。
私はランチの後ぼんやりと仕事をこなし、気づいたら家に帰ってきていた。
すごいな、私の帰巣本能。もうこの新しい家を自分の家だと分かっているらしい。
そしてハッと気づくと、目の前に健一郎がいる。
「な! なんで帰ってきたの!」
「今日は早く仕事終わりましたし、せっかく新婚ですから。三波さんと一緒にいたいでしょう」
当たり前のように健一郎は笑って言う。
(一緒にいたいって……!)
私はランチの時の会話と、今の目の前の健一郎とで大混乱していた。
「ない! やっぱ健一郎だけはない!」
「え……なんですか。何かけなされてます? どうせならもう少しわかりやすくけなしてくれたほうが嬉しいのですが……」
そんなことを言いながら、健一郎はまた笑った。
人の気も知らないで、この笑顔、イラッとする。やっぱり、健一郎への感情は好きとかじゃない。ただイラつくだけだ。
「本当にどうしたんですか? 変ですよ」
「な、なんでもない!」
健一郎が一歩私に近づいてくる。私は思わず身構えた。
そんな私を知ってか知らずか、健一郎は歩みを止める。そして、んーと少し考えると口を開いた。
「三波さん、おなかはすいていませんか?」
私が返事するより先に、私のおなかがグーッと返事をした。