幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
「それは過大評価しすぎだって」
「……実は、多田医学賞だって一度お断りしたんです」
「な、なんで!」
賞なんて断るようなものではないでしょうが!
私なんて、賞と言えば、小学1年生の時の読書感想文コンクールの佳作くらいしかない。
なのに、健一郎は、当たり前のような顔をして、
「賞なんかより、三波さんを見ている時間をもっと増やしたくて。これ以上、この時間が削られることには、耐えられません」と言いだした。
(ホント、この人、何言いだした!)
健一郎は、時々おかしなことを当たり前の顔をして言う人だと思う。
健一郎は言葉に詰まった私を見て、クスリと笑う。
「顔赤いですよ。以前なら気持ち悪い、とか僕を罵倒していたのに」
(気持ち悪いって罵倒するって……あなたはそれも喜んでたでしょうが)
と思うけど、そんなこと言えない。
私は健一郎が私のことを見ている時間を増やしたいと思っていることが、なぜか嬉しいと思っていたのだ。
私だって、健一郎と一緒にいる時間を増やしたい。いつのまにか変態に感化されていることに気づく。自分で自分がおそろしい。