幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
帰り道、二人で手をつないで帰る。
「そういえば、今度から土曜診療だけ、佐伯医院のお手伝いをすることに決まりました」
「いつの間に……。でも、大変じゃない? 健一郎が……」
「いいえ、うれしいですよ。やっとですから」
健一郎は本当に嬉しそうに笑う。
私はその健一郎の顔を見て、健一郎の手をぎゅっと強く握った。
「ごめんね、私、今……健一郎が海外の病院に行かなくてよかったって思ってしまったんだよね。だめな奥さんだね」
「行きませんよ。みなさんが期待してくれるのは嬉しいですけど……僕は僕のやりたいことをやりたい場所ですることが幸せなんです。この幸せを手放す気はありません」
そう言われて、私は思わず健一郎を見る。
健一郎は私を見てまた優しく笑った。
私は何となく恥ずかしくなって、目をそらす。
手がもう一度ぎゅっと握られる。私もその手を握り返す。
―――あぁ、すごく幸せ。
そう思っていたのに、健一郎は、
「早く家について、あなたをむさぼりたいっていうモヤモヤした感情を抱きながら帰るのもたまにはいいですね。今夜はいつもより長くなりそうです」
と非常にさわやか笑顔と、全くかみ合っていない言葉を口から吐いた。
―――この人、本当に何言ってんの?
思わず鳥肌が立つ。
正直、いまだに、時々本当に気持ち悪いと思うことがある。
「いや、それ、ほんと気持ち悪いから!」
「ははは」
「笑いごとじゃない!」
つないだ手を離そうとすると、健一郎がぎゅっと握る。
私は思わずその手を振り解こうとしたが、健一郎はそれを許さなかった。
寒い時期だというのに、背中に汗が流れる。
「さすがに今のは、ただの……じょ、冗談だよね?」
「どちらだと思います?」
意地悪そうに笑う健一郎を見て、私はもう嫌な予感しかしなくなっていた。
家に帰りたいけど、帰りたくない! そんな複雑な思いを抱えて……。