幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
おまけ話:変わらない関係
「これとこれとこれかな」
「これも捨てがたいよね」
「もういっそ、ここからここまで全部にしませんか」
私にはなにかおかしなものが見えている気がする。
というのも、60代男性医師と30代男性医師がそろって、土曜午後診療までの短い休憩時間の中で、ウェディング姿の女性がたくさん載っている『ドレスカタログ』を真剣に見ているのだから…。
付箋貼りすぎて、カタログぶっとくなってますけど……。
中身に書き込まれすぎて医学書みたいになってますけど……。
(カタログってそんな使い方するものでした!?)
それは、以前、私がドレスの試着室であまりにもサクっとドレスを決めたものだから、少し心配したスタッフさんから渡されたカタログで、とはいってももう申し込みは済ませたし、あとの用はないとばかりに資源化物のゴミの日に出したものだ。
「いろいろ疑問は残るんだけど、とりあえず二人はなにをしているの?」
私は、思わず低い声で、そのカタログを見ていた父と健一郎に聞いた。健一郎は私を見ると、さも当たり前のように、
「結婚式のドレス選びに決まってるじゃありませんか」
と言った。
「もう選んだよね?」
っていうか、さっき『ここからここまで全部』という戯言が聞こえは気のせいでしょうか。