幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
5章:雷の夜
健一郎と結婚して何か変わったことがあるかと言うと、まず食事だ。食事がとても豪華になった。私はもともと料理が嫌いではないが、パスタ、だとか、うどん、だとか、しょせんその程度の料理の腕だったので、これだけは嬉しい変化だった。
ただし、食べるところを健一郎にじっと見られた上に、いちいちすごく喜ばれるのは非常に気持ち悪い。
その日も、白米に具沢山みそ汁、焼き鮭、卵焼きに漬物と納豆と言う、健一郎の作ったなんとも完璧な朝食を食べている私を、健一郎はじっと見ていた。
(見ないでって言うのも無駄だって、もうわかったわ……)
そんなことを思っていると、
「今夜、何か食べたいものありますか?」
と健一郎が私に問う。
私はうーんと考えて、昨日たまたまテレビで目にしたものを思い浮かべる。
私だったら絶対作れないし、それを聞いた時の健一郎の困った顔が目に浮かんで、にやりとしながら答えた。
「トムヤムクン」
「では、ソムタムとカオニャオ・マムアンも一緒に作りましょう」
なのに健一郎はあっさりとそれを承諾した上に、わけの分からないものまで増やしてきたのだ。
「な、なにそれっ」
「楽しみにしていてください」
楽しそうに健一郎が笑う。私はなんとなくバツが悪くなって、目線を反らした。
「そんな毎日作んなくてもいいよ。仕事も忙しいだろうし」
「新婚ですし、今は基本日勤ですから。それに何より、僕の作ったものを三波さんが咀嚼しているところを見ているだけで幸せですから作りたいんです。これは僕の希望で、夢ですから」
「相変わらず気持ち悪い」
私が眉を寄せて言うと、健一郎はなぜだかまた喜んでいた。