幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
6章:二人の通勤風景

―――昨夜、私の頭を撫でていた健一郎の手は、私が思っていたよりずっと大きかった。

 身長も無駄に高いのだから当たり前の話なのだけど……。
 なんだか大きく骨ばった健一郎の手が、健一郎も男の人だったんだなぁ、とやけに私に思わせたのだ。健一郎は、性別を感じさせない『ただ気持ちの悪いストーカー』という認識だったから変な感じだ。

(でも、あの時は不思議と気持ち悪くなかった……)

「きっと雷のせいだな」

 そう結論付けて、大学に向かおうと家を出る。
 すると、健一郎が、「僕も一緒に行きます」と私を追ってきたので、半径5メートルに近づかないならよし、と言ったら喜んでぴったり5メートル後ろをついてきた。

(しまった、100メートルくらいにしておけばよかった)

 朝からやけに後悔しながら、私は大学まで歩いていた。
 ちらりと振り返ると健一郎が嬉しそうに笑って手を振ってくる。通りがかったお巡りさんに何度『あの人はストーカーです。捕まえてください』と言いそうになったことか。でも、結婚してしまった以上、ただのストーカーというだけではなくなってしまったので、非常に通報しづらい。

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