幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
部屋から出ると、健一郎に遭遇した。健一郎は、もうスーツを着込み、仕事に出る準備をしていた。テーブルの上には、おいしそうな朝食が並べられている。私は健一郎のほうを見ることができなくて、朝食に目線を固定する。今日もおいしそうだ。
健一郎はと言うと、すぐに仕事に出ればいいのに、まだその場にいるようで、健一郎の気配がずっとそこにあった。
(健一郎のほうは極力見たくない)
そんなことを考えると、心臓の音が急に大きくなり始めた。静かな室内では、健一郎に聞こえてしまうのではないかというほど。
なんだこれ。たぶん、なんらかしらの病気だ。
健一郎に診てもらうのは嫌だから、今度実家に帰った時になじみの先生にでも相談してみようか……。
そんなことを思っていると、健一郎が声をかけてきた。
間違いなく、いつも通りに。
「三波さん、おはようございます。どうしました?」
「お、おはよ……ごはん、ありがと」
「三波さんは、今日もかわいいですね。写真を一枚とってもいいでしょうか」
「え? あ……えっと」
健一郎の言った意味がうまく取れなくて、言葉に詰まる。
そんな私を見て、健一郎は素早くスマホを取り出し、堂々と写真を取り出した。パシャパシャと軽快な音が室内に響く。そうなって、やっと私は状況がつかめ、健一郎のスマホを奪った。
「勝手になに連写してるのよ!」
「これでご飯が10杯はいけそうです。ごちそうさまです」
「この変態!」
すでに本日の写真も200枚を超えている。
(こんなの、いつ撮ってたのよ!)
嬉しそうに笑う健一郎に、私が眉をよせると、健一郎は「すみません、今日は一限から講義があるのでもう出ますね」と言って、先に家を出た。
私は健一郎がやっと家を出てくれて、なぜだか非常にほっとしていた。