幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

 私が押し黙ったので、健一郎は何か勘違いしたようで、
「すみません……まだシャワーも浴びてないから匂いますよね。どうしても消毒液の匂いがとれなくて」と言う。

(消毒液の匂い? 違う、これは……)

「健一郎の匂いだって思っただけで……」
 そうつぶやいて、ふと我に返る。「って、わ! ちょっと寝ぼけてた! 忘れて……! ごめん!」

(何言ってるんだ! 私! 変態か? 変態なのか? 健一郎の匂いってなんだよ!)
 思わず自分で自分にツッコむ。
 まるで自分が健一郎と同じ変態のように思えて泣きそうになった。最低だ……。

 健一郎は、少し驚いた顔をしてから、少し考えるそぶりをすると、
「今ならキスをしても許されるのでしょうか」
 突然つぶやく。

(ん? この人……何言ってんの?)

 私は思わず、はい? と聞き返す。

(聞き間違いだよね……むしろ聞き間違いであってくれ……)

 なのに健一郎は真顔で私を見つめると、
「もう唇だけでなく、体も、指も、足先も、髪の先まで全部……貪りたいです」
とはっきりと言った。

(この人、真顔で何言ってんの!?)

 一瞬で全身に鳥肌が立った。これまでで一番の鳥肌量だ。

「サイアク……! 変態! やっぱ絶対無理!」

 私は叫んで慌ててソファから飛び起き、自分の部屋に走って閉じこもる。

―――今までで一番最悪だぁあああああ!

 健一郎という変態でストーカーな男に、少しでも心を許しそうになった自分を猛省していた。

(変態でストーカー気質で、心からキモチワルイ!)

 だれが人気だって? 誰が仕事できるって? 誰がモテてるって? そんなことどうでもいい!
 私はやっぱり健一郎のこと、心から気持ち悪いって思っている!
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