幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
14章:僕の方だけ見て
―――よそ見なんて絶対にしないでください。僕の方だけ見て、僕の事だけを考えていてくれませんか?
私はその言葉を聞いて、なぜか泣きそうになった。
「そんなこと言われても……私、どうしていいかわかんない」
「きっと、わかるはずですよ」
そう言われて首を横に振ったとき、涙が床にこぼれた。
「三波さん……ハンカチ、どうぞ」
「泣いてないっ!」
「……すみません」
頭が痛い。昨日と今日の出来事のせいだ。なんなら真壁くんのことも含めて、すべては健一郎のせいだ。
差し出されたままのハンカチを持つ手を睨みつける。でも、その大きな手を見ても、やっぱり健一郎が男の人だったのだと思えて、そわそわする。
おかしい。私はこの人のこと、男の人として好きとか嫌いとかそういう気持ちを持ったことはなかったはずだ。
(なのにどうして……昨日も今日も、健一郎の行動や言葉にいちいちこんなに動揺してしまうんだろう)
だって、相手は健一郎だ。小さなころから知っていて、いつも余裕の表情で適度にすべてをこなし、私の周りを常にちょろちょろとして、ストーカー行為に余念がなかった健一郎なのだ。
―――そんな健一郎が、私のこと、『女性』として見てるなんて……。