幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
その時、健一郎の姿が目に飛び込んできた。
「三波さん!」
「おっそい! なにしてたのよ!」
「すみません」
謝りながら、健一郎は、普段どこにその力を隠しているのか、目の前の男を私から引きはがし、なぜか持っていたロープで男を縛り上げたのだった。
―――その間、わずか1分。
「な、なんでロープなんて持ってんのよ!」
私は何を言っていいのかわからずに、ついそんなことを聞いていた。
「三波さんがこういうのが趣味だった時のために、用意しておきました」
涼しげな顔で、健一郎が答える。
いつも用意しているとか、絶対におかしい。変態だ。超絶キモチワルイ。想像しただけで吐ける。
「ばっかじゃない!? キモチワルイ!」
そう叫んだ瞬間、目頭が熱くなった。
ぽたぽたと落ちる涙の意味が分からなくて、私は何度も目をこする。
(おかしい。なんで? 私、なんで泣いてるの?)
ぼろぼろと泣き始めた私を知ってか知らずか、健一郎がそっと私の肩に自分のジャケットをかける。ふんわり消毒液の匂いが鼻をかすめた。
「大丈夫ですから。警察にも連絡しました」
私は、健一郎の顔を見て、健一郎の声を聞いてほっとしていた。
いつもはイライラしてホッとなんてしないのに……そのときだけ、不思議とほっとしていたのだ。