幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
そう言った私を見て、健一郎は小さく息を吐くと、手をすっと私に差し出した。
そして、その手の指で、私の唇をすっとなぞると、さらに胸の鼓動は速くなる。
「っ……」
「僕は三波さんとキスしたいです。何度だって……」
その仕草と感触と言葉に絆されて、頷きそうになる。
でも私は、なけなしの理性を振り絞って、下を向き、また首を横に振った。
「やだ」
「そういう強情なところも好きなんで、自分でも困ったものなんですよね……」
思わず顔を上げて健一郎を見ると、健一郎は困ったような顔で笑っていた。「今日は疲れたでしょう。ゆっくり休んでください」
それ以上、健一郎が強引に何かすることはなくて、私はほっとしたのか、がっかりしたのかわからない感情のまま、シャワーを浴びて、自分の部屋のベッドの上に飛び込んだ。そして、自分の胸を掴む。
「だめだ、どうしたんだろう。なんだこれ……」
その時もまだ、胸の鼓動は強く、速く、鳴り響いていたままだった。