幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
17章:ダイエットは誰のため?
―――そういえば、最近測ってないな……。
朝から洗面所で、ちらりと目に入ったそれ……つまり体重計を見て、そう思ったのだ。
間違いなく増えている。それは自信がある。
でも、たぶん1キロくらいのことだろう。
そう思って、ここまでやり過ごしてきていた。
しかし………現実はそう甘くはないのだ。
「わぉ……!」
体重計の針は、プラス4キロ。4キロ……。
鏡を見ると、少し、いや、確実に4キロ分太っている。
(私の二の腕ちゃん、こんなにおいしそうだっけ? まったくもってけしからん二の腕だ。勝手にモチモチしやがって……!)
そう思いながら、自分の二の腕をずっと揉んでいる。
こんな二の腕をしながら、健一郎にもいつか裸を見せる日が来るのだろうか。
そもそも健一郎は見たいと思っているのか? 実際見せた時は、見ただけでは済まないだろうけど。
キスのその先……テレビでも映画でも保健体育の授業でも、肝心な部分はよくわかってない。そういう時は、相手に身を任せろと聞いたことはあるが、健一郎に任せるにはいささか不安だ。
嫌な予感しかしない。
そんな不埒なことがふと思い浮かぶ。
(って何考えてんのよ!)
頭を振るが、次はまた違う考えが浮かんだ。
そういえば、健一郎が以前付き合ってた桐本先生はスタイルも抜群だったなぁ。桐本先生と私は、まるでモデルと一般人、福沢諭吉と平等院鳳凰堂みたい。猫と牛か? ……ん? なんとなく牛のほうが強そうだな。これはなしだ。
健一郎は私の裸を見て、桐本先生と比べるのかな。
比べたくなくても自然に比べちゃうよね。ちょっと、いや、かなり腹が立つ事態だ。
なのに、その上で、きっと……幻滅されるだろう。別に幻滅されてもかまわない……とは思うものの、なんだかそれも腑に落ちない。
(あれだけ好きだ好きだとストーカーしておいて、幻滅するなら許さないぞアノヤロウ……)
頭の中で悪態をついてみる。
そして、また鏡に向かって二の腕をつかんだ。そして、おなかも触ってみる。
あ、おなかも柔らかいな…。いつまででも触っていられる。触り心地はいい。
そこだけは桐本先生に間違いなく勝利している。……でもそこで勝ってもなぁ。