幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
首筋に這う健一郎の唇の感触に、背筋がぞくぞくとする。私は目をぎゅっと瞑って、自分の唇をかみしめる。
手をぐっと伸ばし、健一郎を押し離そうとしても、健一郎はまったく離れてはくれず、首筋に何度も何度もキスを落とすのだった。
「や、やめてって!」
「三波さんがいると、朝からあまり身体によくないです」
「それ、こっちのセリフだって!」
唯一動かせる足で思いっきり蹴りあげると、健一郎は「ふぐぅっ……!」と急に股間を抑えて私から離れた。
股間を抑える健一郎を見て、あぁ、あんなとこを蹴ってしまったのね……と少し反省する。
しかし、健一郎が一方的に悪い。
「ご、ごめん! でも、健一郎が悪いんだから」
「何かあったら責任取ってもらいますから」
健一郎はまだ痛そうな顔をしながら、ひょうひょうとそんなことを言ってのけた。
(責任ってなによ)
「いや、もう、結婚してるんだし。責任取ってるじゃない!」
「絶対僕以外見ないでください。そういう責任の取り方です」
「またそんなこと……」
「あ、あと、僕にいくら会いたいからって、あまり僕の研究室の周りを勝手にうろうろしないでください。来るなら必ず連絡くださいね」
「はい?」
「これのお詫びに約束してください」
「言われなくても、もう行かないわよ!」
なんで、私が健一郎に会いたいみたいに言われなきゃいけないのよ!
それに、以前のこともあって、なんとなく病棟や健一郎の研究室に行くのは気が引けるのだ。たぶん、もう二度と行かない。
私が叫ぶと、
「はい、いい子ですね」
健一郎が笑って、私の髪をなでた。
子どもじゃないんだからやめてほしい……ちらりとそう思ったのだけど、その手が心地よくてなんとなく、うつむいてそれを受け入れていた。