幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
 そして、その日の夜。
 私は駅前のジムに、森下先生と来ていたのだった。

 今までよく近くを通っていたが、そこにあることは気が付いていなかった。
 聞いたところによると、半年ほど前にできたらしい。

 私は施設内の説明やマシンの説明を受けた後、軽く運動をはじめ、30分も運動していないタイミングで、さっそくバテていた。

「はぁ……」
 息が上がる。そして、いつまでも心拍数が落ち着くことはなかった。

(なんだ、このはてしなく少ない体力は!)

 体力がないとは思っていたけど、ここまでないとは! 自分にびっくりだよ!
 私はどうやら、勉強だけでなくスポーツもできないようだ。

 自分の体力のなさに泣きそうになりながら座っている私に、森下先生は「無理しなくていいのよー」と声をかけてくれる。
 森下先生は息も上がっていない。さすがだ。

 最近思うのだけど、医者は男女問わず体力があると思う。
 健一郎を見ていてもそう思う。朝も夜もなく働いても、ぴんぴんしているのだ。
 健一郎はその中でもとくに体力がある方かもしれないが……。

 私は癖になってきたのか、ふと、自分の二の腕をつかむ。
 この二の腕を健一郎に見せてもいいと思えるくらいになるまで頑張らなきゃなぁ……。

 ぼんやり考えて、立ち上がる。

(……って見せるとかじゃない! 体重をもとに戻したいだけ!)

 この腕を見せるとか、裸を見せるとかじゃなくて! そういうことは想像してない!
 自分で自分に言い訳している。

(ホント何考えてるんだ! 変態! 私が変態だぁあああ―!)

 健一郎に感化されているのだろうか……。いや、健一郎が変なこと言うからだ。間違いなくそのせいだ。
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