きみはハリネズミ
「あ」


突然茅ヶ崎くんが声を上げた。


「これさ、去年の余りの再配布だよね?」


茅ヶ崎くんが手を伸ばしたのは白のペンキだ。


畳4畳分程あるベニヤ板を色付けするのには必須のアイテム。


去年どこかのクラスが余らせたものを文化祭実行委員が引き取ってきたものだ。


「そうだけど…」


「開けてみ」


笑いを含んだ声でそう言われ、私はおずおずといった感じで蓋をひねる。


「……赤?」


白を想像して開けた私は、意表を突かれて目を丸くした。


中に入っていたのは真っ赤なペンキで、つやつやと光沢を帯びている。


「なんかパッケージの剥がれ方が見覚えあると思ったんだ。去年俺のクラスのやつがいたずら目的で入れ替えて、手違いで実行委員に回収されたやつ」


こんなとこにあったんだ、と茅ヶ崎くんの笑いは一層強くなった。

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