きみはハリネズミ
「だったらなんで泣いてるの」




茅ヶ崎くんの細くて綺麗な手が頬に伸びて、体がびくりと震えた。


指先に光るのは……私の涙だ。


茅ヶ崎くんの見透かされそうな瞳が真っ直ぐに私を見つめる。


「本当は助けてって思ってるんじゃないの」


茅ヶ崎くんは私の頬から左手首へと手を滑らした。


掴まれた手首は、熱い。


「放して…」


「本当に人と関わりたくないなら、手がこんなに荒れるまで一生懸命看板作ったりしないでしょ」


「放して…っ!」


茅ヶ崎くんの手を振り払って、持ってきていた荷物をひったくるように手に取る。


───カタンッ


缶コーヒーが音を立てて倒れた。


「私、茅ヶ崎くんのこと大嫌い」


捨て台詞のように吐き捨てた言葉は私が一番言いたくなかった言葉だった。
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