きみはハリネズミ
西野宗司。


恋愛に疎い私でも知っているくらい、その整った顔立ちと恋模様で学校中に名を轟かせている人だった。


西野は違う学校に彼女がいるんだ、とか年上の彼女がいるらしいとか、いつもそんな噂を引っさげていた。


『なんで西野?優里香接点あったっけ』


『この間の委員会ね、西野サボったの。まぁいつものことなんだけど、この間はどうしても役割決めなきゃいけなくて、レジュメ届けに西野の家に行ったの。

そしたらね、ありがとって笑ってくれて。普通のことだけど、なんか胸がぎゅってなって、あぁ、私西野のこと好きだなって」


優里香は私の肩に顔をうずめて『応援してくれる?』と不安そうに聞いた。


『応援するよ。親友だもん』


そう言って笑うと、優里香は花が咲いたみたいに幸せそうな顔をした。


『でも心配だな』


『なにが。だって西野今彼女いないでしょ』


『できるかもしれないじゃん』


優里香は口を尖らせる。


『それに西野なこのこと好きって噂だよ。本当だったらどうしよう』


優里香の言葉に目を丸くする。


驚いた。


そんな噂どこから流れてくるんだろう。


『私西野と話したことすらないよ。私西野のこと好きじゃないし、絶対優里香の方が有利だよ』


『そうかなぁ。一目惚れかも』


『大丈夫だって!ほら、弱気になってどうすんの。ただでさえライバル多いんだから頑張んなきゃ』


優里香はまだ不服そうだったけど、昼休みに委員会が入るところっと元気になった。


恋する乙女はどうやら忙しいらしい。
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