きみはハリネズミ
イチゴミルクは嫌いだ。


甘ったるいのが嫌い。


いつまでもベタベタと口内に絡みつくのが嫌い。


いかにも“女の子”が好きそうな淡いピンク色なんか大っ嫌い。


「なこちゃーん、今日クラスの女子で文化祭の相談しに夜ご飯行くけど来るー?」


教室の端から名前を呼ばれて、私はリュックに教科書を詰める手を止めた。


「ごめん、今日歯医者さんで」


何回目の言い訳かな、と心の中で指を折る。


この間は入院したおばあちゃんのお見舞い。


その前は犬の散歩。


釘を踏み抜いてパンクした自転車の修理はその1ヶ月前。


どうやら私は忙しい毎日を送っているらしい。


別に寂しくはなかった。


1人でいるのは気楽だし、どうせ卒業まではあと1年。


人間関係が織りなす網を器用に潜って、まっすぐまっすぐ歩いていけばいいんだから。


「そっかぁ、じゃあしょうがないね」


「ごめんね、楽しんできて」


大丈夫。


ちゃんと笑えてる。


みんなみたいにふわふわにした巻き髪も、お揃いのキーホルダーも、私はいらない。


近づかない、遠すぎない。


そんな距離を守って過ごすだけ。


私は無表情でリュックのファスナーに手をかける。


いつもより少し乱暴に閉めたそれは、反発するように生地を噛んだ。


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