きみはハリネズミ
私は優里香の恋を応援するために、西野のことをよく観察するようになった。
廊下ですれ違う時、体育の合同授業で西野のクラスと同じになった時、授業中に携帯を使って怒られている西野の横を通り過ぎるとき………
西野はクールでよく分からない男だったけれど、なぜか人を惹きつける目をしていた。
切れ長で、海の凪が映っているかのように澄んだ瞳。
私はいつの間にか、その瞳から目を逸らせなくなった。
最寄りのバス停が同じだと気づいたのはちょうどその頃だった。
真夏の焼け付くような暑さの中、西野の姿を見つけた。
カッターシャツの第二ボタンまでを無造作に開けて、下敷きで風を送る姿は私の心を引っ掻いた。
不意に西野が振り返って私の姿をその目に捉えた。
『…高坂だっけ』
『うん』
『明日って体育第2体育館に変更?』
『うん』
『そっか。さんきゅ』
それが西野と初めて交わした言葉。
西野が笑った時、優里香が言った言葉が頭の中を駆け巡った。
“普通のことだけど、なんか胸がぎゅってなって、あぁ、私西野のこと好きだなって”
私、西野のこと好きかもしれない。
好きになっちゃいけない。
だけど、汗で張り付いた西野のシャツが、茶色に染めた髪が、私の脳を侵していく。
火照った体を鎮めるように、私はコンビニで買った冷たいオレンジジュースを口に含んだ。
廊下ですれ違う時、体育の合同授業で西野のクラスと同じになった時、授業中に携帯を使って怒られている西野の横を通り過ぎるとき………
西野はクールでよく分からない男だったけれど、なぜか人を惹きつける目をしていた。
切れ長で、海の凪が映っているかのように澄んだ瞳。
私はいつの間にか、その瞳から目を逸らせなくなった。
最寄りのバス停が同じだと気づいたのはちょうどその頃だった。
真夏の焼け付くような暑さの中、西野の姿を見つけた。
カッターシャツの第二ボタンまでを無造作に開けて、下敷きで風を送る姿は私の心を引っ掻いた。
不意に西野が振り返って私の姿をその目に捉えた。
『…高坂だっけ』
『うん』
『明日って体育第2体育館に変更?』
『うん』
『そっか。さんきゅ』
それが西野と初めて交わした言葉。
西野が笑った時、優里香が言った言葉が頭の中を駆け巡った。
“普通のことだけど、なんか胸がぎゅってなって、あぁ、私西野のこと好きだなって”
私、西野のこと好きかもしれない。
好きになっちゃいけない。
だけど、汗で張り付いた西野のシャツが、茶色に染めた髪が、私の脳を侵していく。
火照った体を鎮めるように、私はコンビニで買った冷たいオレンジジュースを口に含んだ。