きみはハリネズミ
ロングホームルームのチャイムが鳴る。


茅ヶ崎くんと顔を合わせないようにコソコソと1日を過ごしてきたけれど、さすがに文化祭活動でそういうわけにもいかず、私は立て看板が保管されている倉庫へ向かった。


「あ…」


看板を取りに来た人で混雑した、埃っぽい匂いが鼻をつく倉庫に足を踏み入れると、まるでそこに1人しかいないかのように瞬間で茅ヶ崎くんの背中を見つけた。


謝らなきゃ。


酷いこと言ってごめんって、言わなきゃ。


「茅ヶ崎くん、あの」


茅ヶ崎くんが私に気づいて看板を動かす手を止める。


「ん?」


「あ、の…っ昨日…」


言葉が出てこない。


皮肉だ。


人を傷つける言葉はあんなにもすぐに出てきたのに。


「…高坂さん、あのさ、ちょっと付き合って欲しいところがあるんだけど」


ハッとして顔を上げる。


瞳に映った茅ヶ崎くんは、昨日のことなんて忘れたかのように穏やかな表情をしていた。


なんで?


怒ってないの?


戸惑う私に茅ヶ崎くんは続けて言う。


「見せたいものがあるんだ」


「…見せたいもの?」


「そう。高坂さんに、どうしても」


茅ヶ崎くんはキュッと口角を上げて笑う。
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