きみはハリネズミ
「ハリネズミ…」



丸くて黒いつぶらな瞳に少し上を向いた小さな鼻。


アーモンド色の棘は細くて短い。


「ハリネズミカフェなんだ、ここ。」


茅ヶ崎くんが店員さんからハリネズミを受け取りながら言った。


カゴに残ったもう一匹と目が合う。


「高坂さんも抱っこしてみ」


「え」


茅ヶ崎くんと店員さんはにこにこと笑っている。


恐る恐る両手を差し出すと、店員さんが「そんな身構えなくて大丈夫ですよ〜」と笑いながらハリネズミを乗せてくれた。





…あったかい。


ハリネズミは意外と軽くて、大人しかった。


仰向けに寝転がって薄ピンクの手足をばたつかせるハリネズミがその澄んだ瞳に私を映す。


そっと人差し指で頭を撫でると、ハリネズミはくすぐったそうに身を捩った。


店員さんは飲み物と引き換えに「30分したら預かりに来ますね」と言い残してバックヤードに帰っていった。
< 44 / 73 >

この作品をシェア

pagetop