きみはハリネズミ
《それでは3年生、体験型展示及び、立て看板の講評と結果発表に移ります》



体育館のスピーカーから流れ出る声にピリッとした空気が走った。



あれだけ、頑張ったんだ。



きっと届いているに決まってる。



私は震える指先を隠すようにもう一度手を握り直した。



《今年は例年に比べてレベルが高く、我々審査員も大いに悩みました》



校長先生は焦らすようにゆっくりと発音する。


秋と言えど、全校生徒が集まった体育館は蒸し暑い。



じっとりとした汗が首筋を這う。



《銅賞のクラスは立て看板の単調さが目立ちましたが、展示は表現力が豊かで、構成において最も高い評価がありました。銅賞………》



沈黙が体育館を埋める。



震える呼吸も聞こえてしまいそう。

















《2組》



前の列できゃあ、と歓声が上がった。


ドクン、ドクン。


心臓の音が早くなる。


こんなに緊張するのは初めてだ。


春の自己紹介だってこんなに緊張しなかったのに。


「まだ…銅賞だから」


小さく呟いた尋が握っている文化祭のパンフレットに、くしゃりとシワが寄った。




《さて、このクラスは美術のセンスが高く、小物など細部にまでこだわった装飾が見られました。立て看板の色彩のバランスも心地よかったように思います。銀賞………》

















《5組》




今度は後方でどよめきが起こる。


泣き声が耳を掠めて、私はゴクリと唾を飲んだ。


残る枠は1つ。


「あとは金賞か…」


隣に座った茅ヶ崎くんが怖いものでも見たかのようにぽつりと言った。


泣いても笑っても、次で最後だ。


2週間、色んなことがあった。


人の優しさも、悪意も知った。


結果が全てだとは思わないけれど、それでも目に見える形で評価されたいと願うのをワガママだとは言わせない。


だってそう願えるのは頑張った人だけの特権だから。



《金賞のクラスは、発想力に優れており、さらにその世界観をうまく演出できていたように思います。立て看板も原色を使ったことで展示を引き立てていました。私もこの高校に来て10年になりますが、稀に見る大作だったように思います。それでは発表します。金賞は………》


ドクドクと心臓が脈打つ。


緊張のボルテージが最高潮に達し、会場がしん、と静まり返った。


茅ヶ崎くんも尋も私も、願うように、祈るように、目をぎゅっと閉じた。




お願い。




どうか届いて────


























《6組》
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