きみはハリネズミ
会場中に轟く歓声。
眩しいスポットライト。
熱を孕んだ会場。
そのどれもが違う世界に見えた。
遠くて、
遠くて、
輪郭がぼやけてしまったみたいに。
霞んだ脳が私に現実を突きつける。
取り残された世界は冷たく私の首に巻きついた。
息が詰まる。
温度を失くしてしまったように唇が震えた。
「届かなかった……」
力の抜けた声で誰かが言った。
「……………っ」
だめだった。
届かなかったんだ。
もう、“また”は無いのに。
2度と戻ることは出来ないのに。
悔しい。
悔しい。悔しい。悔しい。
…苦しい。
握りしめた手のひらが痛かった。
茅ヶ崎くんは膝の上で組んだ手を額に押し当てて、唇を噛んでいる。
ぐしゃり。
尋のパンフレットがその手の中で潰れた。