きみはハリネズミ
《ただし》



唸るような歓喜の声の中、校長先生の声が会場を震わせた。



《今年に限り、審査員全員一致で審査員特別賞を設けることにしました。…3年3組、君たちです。

予想外の困難と限りある時間の中、君たちの発想転換力と団結力は目を見張るものがありました。苦難を乗り越え、実泉高校文化祭を盛り上げてくれた君たちを讃えます》









会場が一瞬静かになって、









そして









弾けた。










「え……?」





呆然としたのは私たちだった。





「俺ら……賞とった……?」




「呼ばれたよね、今……」




確かめるように呟かれた声に──────






「っしゃぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」






遅れてやってきた感情は叫び声にも似た歓声に溶けて、絡まって、深く私たちの胸を貫いた。





ぞくっとした感覚が腰から背筋を這い上がって、脈打つ心臓が耳元で鳴った。




今。




今、




今……!




「尋………っ!」



尋はゆっくりと私を見る。



その顔がくしゃりと歪んだ。



「うっ………わぁぁぁぁぁ…っ」



子供みたいに泣き声を上げる尋を抱き締めると、じわりと視界がぼやけた。



身体中が熱くて、痺れるみたいだった。



「俺は取ると思ってたよ」



茅ヶ崎くんが私たちを見て微笑む。



その目が赤くなっているのには気付かないふりをして、私は「知ってる」と笑った。
< 69 / 73 >

この作品をシェア

pagetop