きみはハリネズミ
結局、イチゴミルクは1口飲んだだけでその甘ったるさに顔を顰め、ほとんど残った状態のまま弟にあげた。


弟は「まじで?くれんの?」とがぶがぶ飲んでいたけれど、私は見ているだけで胃がもたれそうだった。


「…貰わなきゃよかった」


コツコツ、と爪で机を叩く。


グランドの砂は太陽の光を反射して白く光り、雲の影を飲み込んでいた。


私は頬杖をついて、窓の外でホースの水を掛け合っている男子生徒らを眺める。


シャツは水に濡れて背中に張り付いて、捲ったスラックスからは小麦色の肌が覗いている。


あぁこれは後で怒られるやつだななんて思っていると、案の定頬を膨らませた女子生徒が男子生徒の袖を引っ張った。


合唱コンクールの練習中だったらしい。


びしょびしょに水浸しになった楽譜は女の子に取り上げられて、くたりと首をもたげた。



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