哀夢(精神科編)
多面性格
わたしが17〜18歳の頃に、多面性格のようになったときがあった。
記憶はあるが、喋り方も性格もまるで違う自分が4人くらいいて、必要に応じて入れ替わるのだ。
まず、1番幼い子どもの真由、次に、母性の象徴のような莉緒、そして、男好きで奔放な奈緒、最後に冷静沈着で大人な悠里、そして、主人格であるわたし…愁。
わたしが、人間関係に疲れ果てていた頃だから、おそらくはそのストレスを軽減させるために生み出したんだろう…。と、先生は言った。
どの人格が出ているときでも、主人格の記憶には残っているため、多重人格ではなく、多面性格と、病名がついた。
真由は人見知りだったからか、あまり外へは出たがらなかった。
奈緒は、気まぐれで、楽しいことが好きだったので、ナンパされたり、そういう関係になろうとすると、突如として出てきた。
莉緒は、母性本能が強く、涼介との付き合いのときに、度々出てきては、主人格となり変わりたいと言っていた。主人格である愁は、涼介に対しての評価の変動が激しかったので、涼介は莉緒に惹かれていった。
正式に別れ話をしているときにも、涼介は莉緒の名前を連呼して、愁を消そうとしていたが、もともと、多重人格ではなかったので、意志が強いときは、他の人格に入れ替わることはなく、涼介とは、それを最後に別れた。
冷静沈着だった悠里は、表に出てくることは少なく、頭の中での主な議長だった。今は誰が出ていくべきだ。とか、あなたは最近暴走気味だから控えなさい。など、その場をまとめてくれるお姉さん的な人格だった。
奈緒は気まぐれだったので、1度大きな問題を起こしたことがあった。出会い系サイトで知り合った男の人と会って、キスをされた瞬間に、真由と入れ替わったのだ。
単に、好みじゃないという理由だったが、真由は恐怖で泣きだすし、悠里は頭の中で怒鳴り散らすし、わたしは頭が痛いと嘘をついて、送ってもらった。
4人の人格は、自然に統合した。中絶したときに、気がつくといなくなっていた。頭の中は静かになり、お腹の中が空っぽになった気がして、わたしは突然独りを実感し、孤独と虚しさに飲み込まれた。
気がつくと、またODとリスカの嵐だった。
父ちゃんは、困り果てて言ったんだ。
「すまん。父さんはどうしてもお前にこんなことをしたヤツと落ち着いて話し合う気になれん。」
………なぁんだ。そういうことなら謝れるんだ。
「もういいよ。殺したのはあたしやし…。」
わたしの中で、ぽっかりと空いた穴が、蓋をした。その蓋は、決して開けてはいけない、パンドラの箱のようだった。
記憶はあるが、喋り方も性格もまるで違う自分が4人くらいいて、必要に応じて入れ替わるのだ。
まず、1番幼い子どもの真由、次に、母性の象徴のような莉緒、そして、男好きで奔放な奈緒、最後に冷静沈着で大人な悠里、そして、主人格であるわたし…愁。
わたしが、人間関係に疲れ果てていた頃だから、おそらくはそのストレスを軽減させるために生み出したんだろう…。と、先生は言った。
どの人格が出ているときでも、主人格の記憶には残っているため、多重人格ではなく、多面性格と、病名がついた。
真由は人見知りだったからか、あまり外へは出たがらなかった。
奈緒は、気まぐれで、楽しいことが好きだったので、ナンパされたり、そういう関係になろうとすると、突如として出てきた。
莉緒は、母性本能が強く、涼介との付き合いのときに、度々出てきては、主人格となり変わりたいと言っていた。主人格である愁は、涼介に対しての評価の変動が激しかったので、涼介は莉緒に惹かれていった。
正式に別れ話をしているときにも、涼介は莉緒の名前を連呼して、愁を消そうとしていたが、もともと、多重人格ではなかったので、意志が強いときは、他の人格に入れ替わることはなく、涼介とは、それを最後に別れた。
冷静沈着だった悠里は、表に出てくることは少なく、頭の中での主な議長だった。今は誰が出ていくべきだ。とか、あなたは最近暴走気味だから控えなさい。など、その場をまとめてくれるお姉さん的な人格だった。
奈緒は気まぐれだったので、1度大きな問題を起こしたことがあった。出会い系サイトで知り合った男の人と会って、キスをされた瞬間に、真由と入れ替わったのだ。
単に、好みじゃないという理由だったが、真由は恐怖で泣きだすし、悠里は頭の中で怒鳴り散らすし、わたしは頭が痛いと嘘をついて、送ってもらった。
4人の人格は、自然に統合した。中絶したときに、気がつくといなくなっていた。頭の中は静かになり、お腹の中が空っぽになった気がして、わたしは突然独りを実感し、孤独と虚しさに飲み込まれた。
気がつくと、またODとリスカの嵐だった。
父ちゃんは、困り果てて言ったんだ。
「すまん。父さんはどうしてもお前にこんなことをしたヤツと落ち着いて話し合う気になれん。」
………なぁんだ。そういうことなら謝れるんだ。
「もういいよ。殺したのはあたしやし…。」
わたしの中で、ぽっかりと空いた穴が、蓋をした。その蓋は、決して開けてはいけない、パンドラの箱のようだった。