雨と霧と煙の異世界生活
「…てめぇが相手…?くくくっ」
…奴が笑うのもそのはずだ。
虚勢を張ったものの、僕の身体はガクガクと震えている。
それどころか、動機も激しく、息をするのがやっとというところだ。
ハッキリ言って、このままならば僕は確定で死ぬだろう。
僕は臆病者だ、下手すれば善逸くんなんてもんじゃないくらいの臆病者。
声に、言葉に、出さないだけの…何も出来ない無能な臆病者。
「そんな震えた身体で何をする?呼吸もままならない癖に何をする?
虚勢を張るのもいい加減にしろ!!大人しく俺に喰われろ、クソガキ!!」
ああ、あの鬼の言うことは何ら間違っていない。
怖い、嫌だ、やめて、生きたい、死にたくない、見逃して、お願い、ごめんなさい、
今の感情なら、言い表せないくらいあって…心を読む人が居たら、うるさいって言いたくなるくらいだろう。
…でも、その心の何処かに。
死ぬことに対して…やっとか、って安心している自分も居るんだ。
僕の死の未練があるとしたら、間違いなく二人…家族だろう。
だからもし…二人が助かるのなら…僕は、死んだって良い。
『巫山戯た事を言うのも大概にしろ、下等な鬼めが。』
本来なら絶対に口にしない言葉が出てくる。
嗚呼、ダメだ、何を、
『お前如きに僕は殺られない…僕の家族は殺らせない…!!』
そう言いながら睨み付け、木の枝を振る。
…どんどんと威圧が強くなっていく、怒らせている、間違いない、僕は死ぬ。
麗子「楓…!!!!」
『…ママ、雅…大丈夫、大丈夫だからね…』
考えろ、考えろ、僕に出来ること、僕が死んだとしても、刺し違えたとしても、奴を殺す方法、又は戦闘不能にする方法、考えろ、考えろ、考えろ、
「くくくっ…俺にそこまで虚勢を張ったのはお前が初めてだ…今までで一番、苦しめて殺してやる!!」
そう言って、襲い掛かってくる鬼。
さっきの手は通じない、なんせ今狙われているのは僕。
二人が叫んでいる、僕が危ないから、死にそうだから。
…考えろ、僕はアニメを見た、そして調べた、それなら…何か出来ることがあるはず…。
…出来ないなんて、そんなこと、知らない。
整わない息を無理矢理整え…
『スーーーーー…』
息を、吐く。
雅「…え?」
『…全集中、』
思い出せ、
『水の呼吸。』