雨と霧と煙の異世界生活
―楓side―
漆ノ型、雫波紋突き(しずくはもんづき)は最速の突き…迎撃用!!
これならば…!!
技を放ってから鬼の方を見ると、上手く当たってくれたらしく怪我をしている。
それもかなりの痛手…これなら逃げる余裕がある!!
『今だよ!!逃げて!!』
そう言えば、二人が走る。
この調子で行けば、抜けることが出来るかもしれない…此の森から!!
そう思ったその時、右目に激痛が走る。
…いやぁ、でも、内臓に骨が刺さった方が痛かったし。
そう思うものの、上手く身体が動かない。
『はっ…思考と身体じゃあ違うって…?』
そう自らを嘲笑したその時。
身体が吹っ飛んでいく。
『あっ…があっ…』
声にならない声が出て、あまりの痛みに今にも気を失ってしまいそう。
「このクソガキが…ただの枝で…俺に傷を…!!」
…ああ、ダメだこれ、僕死ぬなぁ…。
ママと雅が止まっているのが見える。
『僕はいいから!逃げろ!!』
そういうのに、一向に動く気配が見えない。
それどころか…僕の方へ向かって、雅が走ってくる。
「邪魔すんな!!」
そう言って雅を蹴飛ばす鬼。
『っ…お前!!よくも!!』
そう言った途端、僕の首を締め上げて持ち上げる。
『ぐっ…』
「こんなクソガキに傷を付けられるなんてなぁ…俺はこう見えて十二鬼月なんだぜ…?」
そう言ってくる奴の目を見るが、数字なんて書いていない。
…ああ、アニメに居たな…そう煽てられて…死んで行った鬼…。
「屈辱的だ…このまま首の骨を折ってから…四肢を引きちぎって…それから喰ってやる…!!
…もちろん、お前が命を懸けて守った家族の前でな…!!」
『…っ…なこと…されたら…トラウマに…な、る…だろうがよ…』
「安心しろ、家族もすぐにお前の後を追う…!!」
首に力が入っていく。
『がっ…ああっ…』
…無理だこれ、力が入らない…枝も落とした。
呼吸が出来ない…水の呼吸も使えない…。
…少しでも、二人を守れて…良かったけどさ…逃げてよ。
僕が守った意味…ないじゃんか…。
『…ご、めん…』
そう言って、意識を手放そうとしたその時。
ヒュッ
…風を斬る音がしたかと思えば…僕の首を掴んでいる鬼の、首が飛んだ。