雨と霧と煙の異世界生活
あ、落ちる。
そんなことを呑気に考えていた。
…もう、頭には酸素が回っていなくて、何かを考えることが出来ない。
彼奴結構大きかったからなぁ…この高さから落ちれば、どっちにしても死ぬのかもなぁ…。
死ぬ時なのに走馬灯が見えないんだけど、これって僕の性質か何かなのかな?
前の世界で…死ぬ時だって、何も見れなかったじゃん。
…雅とママが悲しそうな顔をしてる気がする。
僕…ダメだよここで死んだら…二人に、トラウマ背負わせてどうすんの…。
『っ…』
全集中の呼吸だ…それで、少しでも治癒して…
『…は、』
思わず笑いが零れる。
…もう遅いなこれ、肋折れてる感じする、内臓にまでは行き届いてないけどさ、首も痛いんだ、折れてはないと思うんだけど。
…あれ、そもそも…鬼の首斬ったの…誰だろう。
…ていうか僕、死ぬのに何でこんなに色々考えてるんだろう。
…考えれるんだろう。
分かんないなぁ…。
『…死ねるかよ、』
あれ、僕枝落としたんじゃなかったっけ。
ズボンに挟まってんじゃん、笑うわ。
そう思いながら、咄嗟に枝を持ち構え…また、全集中の呼吸をするため、息を吸う。
『スーーーーー…』
もう一度、だけ、だ。
これ終わったら少し寝よう…喰われて終わってたら笑ってやろう。
『全集中、水の呼吸。』
集中しろ、決して集中を逸らすな、今は助かることだけを考えろ…。
二人は平気、きっと平気…大丈夫だからね。
…うん、信じてるから。
きっと、誰かが二人を、助けてくれる。
僕を助けられるのは僕だけ…
…今だ。
『弐ノ型、』
今まで瞑っていた目を、地面に向けて少しだけ開け…技を放つ。
『水車(みずぐるま)。』
「…!!」
その技で落ちていく勢いを緩め、痛みが殆ど無いまま落ちる。
…あっれ、もしかして、これ…
『助かった系…じゃん…?』
そう呟く。
…ああ、誰か居るな…この雰囲気は雅とママ…あと誰だろう?
鬼舞辻じゃないなら誰でも良いや…。
『…二人を…安全な、場所に…』
そう言うと、誰か分からない人影は…答えた。
「…この二人は任せて、お前は休め。」
…それでは、お言葉に甘えて…。