雨と霧と煙の異世界生活
―?side―
任務が入った森で、鬼以外の気配がした時は急がなくてはいけないと思った。
その時鬼の叫び声が聞こえてきた気がして…その声のした方へと向かった。
そこでは先程の叫び声を出した鬼と思われる鬼が、何故か痛手を負い…一人の少年の首を絞めていた。
…少年には悪いが、これなら気付かれず一瞬で首を取れる。
そう思い…間合いに入り、一瞬で首を取った。
この鬼は中々にデカい…かなりの人間を喰ってきたのだろう。
そんなことを考えている内に、少年のことを一瞬、ほんの一瞬忘れてしまった。
「やああああ!!」
家族と思しき二人の内一人の叫び声によって我に返り…すぐさま少年を助けるために駆ける。
…が、どう考えても手遅れだ。
このままでは…あの少年は、間違いなく死ぬ。
あの鬼は中々の大きさだった…つまり、首を絞められていた少年はかなりの高い位置から落ちていることになる。
一瞬が命取り…一人の少年の命を守れなかった。
…はずだった。
少年は突然、何処から出したかも分からない枝を持ち…気配を変えた。
『弐ノ型、水車。』
「…!!」
その言葉にハッとする。
…あの少年は、水の呼吸の使い手…と、言うことか…?
いや、だが…だとしたら誰に教わった…?
そもそも、あの少年は鬼殺隊にも…俺の知っている限りの育手の子でもない…。
なのに何故…何も知らないはずのあの少年が…水の呼吸を…?
考えている内に、自ら衝撃を軽減し着地にも似た形で地面へと落ちた少年。
その少年の元に駆け寄っていく家族らしき二人。
俺もそれに付いて近付く。
…気配が全く違う…本当にこの普通の少年が、水の呼吸を…?
そう思っていたその時、少年が言った。
『…二人を…安全な、場所に…』
…右目に重傷…見た感じでは、肋も何本か折っているだろう。
そんな中で…この少年は自分のことを置いておき、家族のことを心配しているのか…?
少年を安心させるため、俺は少ししゃがみながら…言った。
「…この二人は任せて、お前は休め。」
そう言えば、少年は少しだけ微笑み…目を瞑った。
…まさか、あの鬼に痛手を負わせたのもこの少年…?
だとしたら…只者では、ないだろう。