雨と霧と煙の異世界生活
初めての共通点
『1ヶ月か…。』
そう呟きながらとある場所に向かう僕。
電車に乗り、バスに乗り、そして…その目の前までつく。
コンコンッ
少し軽めにそんな音を立てれば、中から此方へ向かってくる足音がしてきて。
今日は早かったなぁ…なんて思いながら開けられるのを待つ。
雅「久しぶりー。」
扉が開くと同時に放たれたその言葉は、紛れもなく妹の総魔雅(そうまみやび)からのもので。
『うん、久しぶり雅。』
そう言いながら中へと入る。
ここは僕の母と妹の住む家…まあ、一言で言ってしまえば僕の実家だ。
色々訳あって…僕だけここに住んでいない。
今回は1ヶ月ぶりの再会となったが、2ヶ月3ヶ月会わない頃とかもあった…から、今回は早い方だったのだろう。
中に入れば、母がスマホを弄っていて…僕に気付いたのか、弄っていたスマホを置く。
麗子「よっ。」
そう言い、笑い掛けて来る母は相変わらず美人だ。
母の総魔麗子(そうまれいこ)に挨拶をされ、軽く会釈して微笑みながら座る。
『…いや、変わらなすぎね。』
雅「たった1ヶ月で変わってもねぇ。」
『いやいや、普段はそっちがこっちに来てくれるんだから…家自体に来たのは半年以上ぶりだよ。』
これが事実。
僕は本当に訳有りという奴で、基本的に外へ出たりはしない。
だからこの家に来たのも半年以上ぶり…前に来たのが去年の11月で、今が9月だから…ってあれ、もうすぐ1年じゃん。
そう考えたら唐突に泣きたくなったが、我慢。
僕は泣かないからね、強い子なの強い子。
麗子「楓の居る空間とか懐かしいんだけど。」
『いやほんとそれね。』
去年の9月、僕はこの家に住まなくなった。
もうあと数日で1年経ってしまう。
1年と言うのは思ったよりも早いものだなぁ…なんて感傷に浸ってしまうのも仕方ないと思う。
僕の時間は、1年前のあの日から、ずっと止まってしまっているから。
雅「何か飲む?」
『あー、うん。よろしく。』
ボーッとしていれば雅が気を使ってそう言ってくれて。
優しい子になったな…なんて、何故か謎の親目線になる。
暫く見ない内に身長も少し高くなった気がする。
妹というのも、中々見ない内に変わってしまうものなんだな。
この辺りも変わった、あったものがなくて、なかったものがある。
1年とはそんなにも長いものなのか。
不思議に思いながら、首を傾げることもしないで、ただ雅が飲み物を持ってきてくれるのをただ待った。