雨と霧と煙の異世界生活
『…あの、』
バンッ
…部屋の扉が思い切り開けられ…入ってきたのは、雅。
雅「…楓?」
『雅だ。』
雅「…ほんとに、楓?」
『楓さんですよ。』
雅「〜〜〜〜〜…楓!!!!」
そう言いながら、突進に近い形で抱き締めてくる。
うん、言うね?
『痛い痛い痛い痛い肋折れる!!』
胡蝶「既に折れてますよ?」
『あ、そうでした…って雅マジで痛い痛い痛い!!』
痛すぎる、しかも痛いって言ってるのに力を強めてる、このゴリラめ。
『ちょ、ねぇ、ほんと、痛…』
楓「起きて良かったあ…」
『僕どんくらい寝てたの…』
胡蝶「12時間でしょうか?」
『普通じゃないですか!!雅僕普通の睡眠とっただけっぽいよ!?!?』
雅「三日くらいに感じた…」
『長すぎだわ阿呆!!』
とりあえず無理矢理剥がす。
胡蝶「思ったより、起きるのは早かったんですよねぇ。傷の治りは常人なのに。」
『…傷の治りも早くあって欲しかったです…。』
胡蝶「早く治したいなら、お薬飲みましょうね。」
にこにこといつもの可愛らしい笑顔でお薬を差し出してくる。
薬って苦手だけど…実はこう見えて長い間飲んでいるから、そこまででもない。
『ん…苦…』
胡蝶「よく飲めました。」
にこにこと笑顔のままで頭を撫でてくれる。
しのぶさん優しいかよ…。
雅「…生きてよかった。」
…そんな、雅の弱々しい声が聞こえてくる。
『…ごめんね、危ない所に自ら突っ込んで。』
雅「ほんとだよ!!」
え、ええ。
雅「…私のことなんて放って、逃げれば良かったのに。」
そう言われ、僕もしのぶさんも黙り込む。
『…雅はさ、もし逆に僕があの状況だったら…どうしてた?』
雅「…たす、けてた…」
『でしょ?立場が逆だっただけ。』
そう言いながら、まだ痛む肋辺りを軽く抑えながら言う。
『このくらいで済んだ、生きていられた、今ここに居る、僕も雅も。
…何が起こったとはいえ、その事実があるから良いんじゃないかな…なんてね。』
そう言うと、雅はとうとう我慢が出来なくなったというように、涙を流す。
『ほらほら、おいで?』
そう言って腕を広げれば、さっきとは違い優しく抱きついてくる。
背中を擦ってやれば、小さく嗚咽を零していて…。
…怖かったよね、ごめんね。
姉が目の前で死にそうになるなんて…怖いよね…。
そう思いながら、ずっとずっと撫で続けた。