雨と霧と煙の異世界生活
『…じ、つは。』
ゴクリ、と生唾を飲み込んでかは…言葉を吐き出す。
『僕達、異世界からトリップというものをしてきて…異世界の住民だったんです。』
そういうと、暫くの間黙り込んで僕の目を見つめる冨岡さん。
純粋に照れるって話します?(真顔)
冨岡「…はあ。」
…今僕の顔見て溜息吐いたよね、喧嘩売ってる系のあれですか??
そう思いながら少し不機嫌な顔をしているであろう僕の顔を見て、無表情を貫き通しやがる冨岡さん。
は?????(真顔)
胡蝶「三人とも口を揃えて同じことを言うんですね。」
…しのぶさんのその言葉に、少しハッとする。
今雅達に顔も向けず僕にだけ問うて来たのは、もう二人には事情等を聞いていたから。
寝ていた僕とは流石に話し合うことなんて出来ない…だから何があったかも嘘を吐けない…そう判断して、僕に聞いたんだろう。
…あー、何だよ冨岡さん策士かよムカつく。
でもこの短時間でそれを理解した僕も僕だと思う(自画自賛)
冨岡「…なるほどな…信じる価値はあるかも知れない…だが証拠が足りない。」
『…冨岡さんは、普段無表情ですが、好物の鮭大根を食べる時だけは表情を和らげるらしいですね。』
冨岡「…!?」
『しの…胡蝶さんは、生姜の佃煮がお好きですよね。』
胡蝶「…よく分かりましたね?」
そう言って笑顔を崩さない。
『胡蝶さんが笑顔を崩さないのは、亡くなった元花柱であり姉であるカナエさんが、胡蝶さんの笑顔を好きだと言ったから。』
胡蝶「…っ、」
『…あと…冨岡さん、は…』
…言うべきか?
分からない…が、信じてもらうため…。
『…錆兎。』
冨岡「…!!」
『…これで信じてもらえますかね?』
そう言いながらにこりと笑う。
…予想通り、雅とママでさえ驚いている。
胡蝶さんのはまだ分かるかもしれない…いや分からないか、花柱というのは漫画でしか明かされていないし。
錆兎自体は知っていても、まさか冨岡さんと関係があるとは思ってもいないはず。
一応調べた知識は頭に入っている…だから、信じてもらうにはこれが一番だと信じている。
そのために二人の傷を抉ってしまったのは申し訳ない。
でも…これが、僕の…僕達の、生き延びるための道。