雨と霧と煙の異世界生活
『…あの、冨岡さん?』
冨岡「………」
『…刀、降ろしてもらえませんか。』
錆兎さんの名前を出したからなのか、はたまた他の理由なのか…冨岡さんは、鬼殺の時に使う刀を抜き、僕の首元に突き立てている。
麗子「…何してんの。」
ママが珍しく怒っている、でも今だけは待って…。
『知らないはずの錆兎さんの名前を出されて動揺してますか?
…残念ながら、僕はあなたの過去自体を知ってしまっているんですよ。』
冨岡「黙れ。黙らなければ…斬る。」
『人を守る鬼殺隊の貴方が、僕を斬ってしまってもいいのですか?』
そう声を掛けると、少しだけ刀がブレる。
…どうする、これをどう切り抜ける?
胡蝶「…それではこうしましょう。ここに居ない他の柱の名前を答えてください。」
『良いですよ?』
全員暗記している。
舐めるなよ、僕の記憶力。
胡蝶「それでは…」
きっと、しのぶさんが◯柱、と言って僕が答える…と言った形になるのを期待していたのだろう。
だが生憎、僕はそこまで気が長くない。
…というより、肋が痛いから、早くこの話終わらせて少し休みたい。
『炎柱・煉獄杏寿郎、音柱・宇髄天元、恋柱・甘露寺蜜璃、霞柱•時透無一郎、岩柱・悲鳴嶼行冥、蛇柱・伊黒小芭内、風柱・不死川実弥…ですよね?』
少し微笑みながら、全ての柱を答える。
冨岡さんとしのぶさんは、それによって何も言わなくなる。
『…あ、ごめんなさい、蟲柱の胡蝶しのぶさん、水柱の冨岡義勇さん…あなた達を忘れてましたね。』
そう言えば、腕を組んで考え事を始める冨岡さん。
刀を下ろしてくれたことにホッとする。
…あのままじゃ、ママがキレそうだったんだよね(遠い目)
キレたママは取り返し突きませんよ…さすが元ヤン。
そんなこと考えながら、少し遠い目をもう一度する。
…はー、気が遠くなるなぁ…この先僕…僕達…どうなるんだろう…。
胡蝶「…とりあえず、楓さんは身体を休ませてくださいね。」
そう言って僕のことを半強制的に寝かせてくる。
それは酷くないかなしのぶさん。
『…ちょっと休みます。』
でも痛みに勝るものはないらしく、痛みを耐えるよう…目を瞑った。
…うん、まあ、寝れないんだけどね。