雨と霧と煙の異世界生活


『…“鬼滅の刃”?』



そう言って固まる。



まさかその名前が出てくるだなんて思わなかった。



二人は…特に妹は、人外系が好きではなかったはずなのに。



『…一体どんな心境の変化だよ…。』



思わず頭をがしがしと掻きながらそう言えば、そんな反応もするよね、と言いたげに母が眉を寄せながら笑った。



麗子「知ってた?」



『…知ってたも何も…つい先日から、だけどハマってるアニメだよ。』



好きになってハマると他のアニメ等を蔑ろにしてしまう性格のため、出来る限り好きにはならないよう気を付けていた。



…が、僕は妹とは真逆の性格。



人外系のアニメ等がめちゃくちゃ好きすぎるくらいに好きなのだ。



特に鬼が出るアニメは、何かと見たくなって見てしまう。



そのために鬼滅にハマる自信はかなりあったため、見ないようにしていたが…ちょっとした現実逃避の際、見てしまったのだ。



…まあ、案の定ハマったよね。



麗子「…もしかして、私達初めての共通点なんじゃ…?」



『いやそれ今僕も思ったわほんと。』



思わず即答すれば、母はやっぱりと言いたげににこにこと笑う。



この趣味の合わないことが理由で色々起こったりはしていた。



だから今回のは仲を“修繕”するには丁度良すぎる機会なのだ。



『え、誰好き…?』



推しを聞くのはまず第一、そんな気持ちで聞く。



麗子「伊之介か不死川くんが好きかなー。」



『伊之介と不死川さん…不死川?どっちだ??』



麗子「柱の方。」



『実弥さんの方かっ』



変な態度を取ってしまうのは仕方ない、柱ならかなり調べたから(真顔)



雅「何の話してるのー?」



炭酸をコップに二つと、お茶を一つで持ってくる雅に期待の眼差しを向けてしまう。



雅「いや何だよ。」



『そんなに真顔で言わないで、鬼滅で好きな人教えて!』



雅「推し?炭治郎。」



『さすが主人公好きになるだけあるよね。』



雅「私はいつでも主人公推しです、登場多いしね。」



『あれそこ!?』



とは言えまさかのまさかで二人と推し語りが出来ている…え、何これ幸せ?



麗子「そう言う楓は?」



『…みんな好きだよ。』



雅「卑怯な言い方するな??」



目が、目が笑ってないよ、ねぇ。



『…冨岡さん、あ、でも時透くんも可愛い、でも伊黒さんも好き、だけどやっぱり鬼舞辻も、あ、』



麗子「推し一人に絞れないタイプだっけ?w」



『最推しは冨岡さんです…。』



雅「そんな気してたわw」



見抜かれていた…だと…!?



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