無邪気な彼女の恋模様
ワークルーム最終日、私はお菓子片手にワークルームメンバーにひとつずつ配って回った。

「お世話になりました。」

「何で百瀬さんが配るの?もらう方でしょ?」

そう言って、水戸さんはコンビニの袋を差し出してくる。
見ればたくさんの種類のお菓子が入っていた。

「こっちがお世話になったからさ、ほんの気持ち。」

「こんなにたくさんですか!?」

遠慮しつつも、その気持ちをありがたく受け取り、私もほんの心ばかりのお菓子をひとつ水戸さんに差し出した。

波多野さんから忠告を受けていたけど、何だかんだ上手くやれたなぁと自己評価だ。

最後に木村さんのところへもお菓子を持っていった。
お菓子を差し出すと、木村さんは目を丸くして驚く。
そんな姿はちょっと斬新で、レアなもの見たお得感でいっぱいになる単純な私。

「何か申し訳ないね。こっちが百瀬さんにお世話になったのに。」

「いえいえ、いろいろ勉強になりました。」

「飲み会でも開こうか?百瀬さん、お疲れ様会。あ、でもメンバーがおじさんばっかりであんまりかな?」

「そんなそんな。その気持ちだけで十分ですよ。ありがとうございます。」

手をパタパタと振ってからペコリとお辞儀をし、顔をあげると木村さんの綺麗な瞳と目が合う。
間近で見るとほんとイケメンで図らずもドキリとしてしまう。
うーん、目の保養、心の潤い。

「あのさ、」

木村さんの薄くて綺麗な唇が小さく動く。

「はい。」

「二人でしようか、お疲れ様会。」

「えっ?」

「今週の金曜とかどう?」

「え、あの、はい…?」

私の理解が追い付く前に、木村さんのリードのもとあれよあれよと“お疲れ様会”と称した木村さんとの飲み会が決定した。
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