無邪気な彼女の恋模様
そんなモヤモヤした状態のまま、金曜日を迎えてしまった。
金曜日は一大イベント、木村さんとのお疲れ様会の日だ。
前日からまるで遠足前の子供のようにソワソワしてしまって、あまり寝れなかった。

だってあのファンの多い木村さんだよ。
そんな木村さんと二人きりで飲みに行くなんてどんなボーナスステージよ。
きっとワークルームの仕事を頑張った私へのご褒美だよね。

終業時刻になり、私はいそいそと帰り支度を始めた。席を立つ私の肩をポンと叩かれてそちらを振り向くと、ほっぺたに衝撃が走る。

「ははほはん。」

肩に置いた手から指が一本私の頬にむにゅっと突き刺さっていて、上手くしゃべれなかった。

「おまっ、引っかかりすぎ。」

波多野さんが声をおしころして笑っている。
見事に引っかかった私は不機嫌に波多野さんを睨む。
まったく、笑い事じゃないよ。
何するんですか。

でもそのおかげで、ここ数日の雰囲気の悪さは一瞬にして吹き飛んだ。

「今日行くんだ?」

「行きますねぇ。というか、断るすべを知らないです。下っ派なので地位が低いのです。」

「じゃあ俺の言うことも聞けよ。」

「ええーーー。」

波多野さんはチッと舌打ちをした。
おいおい、聞こえてるよ。
あ、もしかして聞こえるようにやったのかな。
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