無邪気な彼女の恋模様
「ところで百瀬さんは波多野のことが好きなの?」

唐突に聞かれ、私の胸はドキリと跳ねた。
な、なぜそんなことを。

「えっ?いや、好きっていうか、頼りにしている先輩です。」

当たり障りのない返事をすると、木村さんは「ふーん」と冷たく相槌をうった。

冷や汗が出る。
本当は波多野さんのことすんごーく好きです。
でもそんなこと口が裂けても言えない。
波多野さん彼女いるし。
それにそんなこと木村さんに知られたくないし。

努めて自然にしていたハズなのに、木村さんは口の端を上げて言った。

「花緒ちゃんはほんと分かりやすくて可愛いね。」

一瞬時が止まった。

名前呼びされたと分かったとたん、顔から火が出そうなくらい真っ赤になって頬を押さえる。

名前呼び、やばい。
ドキドキする。
木村さんは私を覗きこむようにして、艶っぽい笑みを浮かべる。

「ねぇ、波多野なんかやめて俺にしなよ。」

「え。。。」

「ずっと可愛いなって思って見ていたんだ。」

何を言い出すんですか、このイケメンは。
必要以上にドキドキが止まらなくて私は焦る。
こ、これは、もしや、告白ってやつだったりするのかしら?

木村さんの手が私の顔の横をスッと通りすぎた。
と思ったら、長くて綺麗な指が私の髪をすくってそっと耳にかける。
指が耳に触れる感触がゾクゾクとして、私は思わず身をすくめた。
その指がそのまま首筋をなぞって顎をそっと掬い上げる。
あまりにも自然な動きで私は何も動けず、なすがままだ。
ただただ胸の鼓動だけが大きくなっていく。

ど、ど、ど、ど、どうしよう。

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