無邪気な彼女の恋模様
ロコモコ丼を前にして私はニコニコ笑顔だ。
美味しそうなご飯。
それよりも目の前に波多野さん。
わーい、幸せ。

「いっただっきまーす。」

上機嫌の私に波多野さんは苦笑いをしながら聞く。

「百瀬、最近機嫌悪くね?」

「今はテンションマックスです。」

「うん、百瀬ってわかりやすいよな。」

あれ?わかりやすい?
何かこれ誰かにも言われたなぁ。
えーっと、誰だっけ?
思い出したとたん、私のテンションはしゅるしゅるとしぼんでいく。
そう、木村さんだ。
あれ以来、木村さんとは関わっていないし結局お金も払っていない。
そんなことを忘れるくらい、今は水戸さんがうっとおしい。

「はー、顔に出てましたか。最近いろいろあったんです。」

「木村とか?」

「まあ、それもありますね。あのとき波多野さんが電話してくれなかったらどうなっていたことか…。」

微妙に思い出して私は大きなため息をつく。
ほんと波多野さんは救世主だよ。
あの電話はタイミングよかった。
電話がなかったらキスしちゃってたもんね。

「だから木村には気をつけろって忠告しただろ。着信音、大音量にしておいてよかったじゃん。」

「そうなんですよ。…って、なんでそのこと知ってるんですか?」

あのとき、マナーモードが解除され着信音が大音量に設定されていた理由は分からずじまいだった。
スマホのバグ?とにかくラッキーだった、で済ませていたのに。

「もしかして波多野さん私のスマホ触りました?」

「どうだったかな?」

波多野さんはとぼけた顔でロコモコ丼を頬張る。

あー、もう、これ絶対そう。
波多野さんの仕業。
仕事のことでもいつもフォローしてくれて、それをおくびにも出さない。
そういうとこだぞ。
私の胸をキュンキュンさせちゃうのは。
これ以上私をときめかせてどうするつもりよ。

あ、でも。
勝手にスマホ触るとか、ちょっとそこどうなの。
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